第53回(令和6年5月27日)

JR 羽越本線阿賀野川橋りょう(阿賀野市)

 阿賀野川にかかるJR 羽越本線阿賀野川橋りょうの右岸側の堤防について、長年の堤防の切り欠き状態を解消するため、令和2年から令和4年にかけて、堤防及び橋りょうの改築工事が実施されました。洪水対策を早急に発現できるようにするために、橋りょうの改築工事については、橋りょう全体架け替えは行わずに、堤防部分にかかる1連分の橋りょうを架け替え、特殊堤防を新設する暫定的な整備をすることとしました。
今回はその橋りょう改築工事等について、紹介させていただきます。

1. JR 羽越本線阿賀野川橋りょうと阿賀野川について

図-1 JR 羽越本線阿賀野川橋りょう位置図※1

 JR 羽越本線新津・京ヶ瀬間の阿賀野川橋りょうは、新潟県阿賀野市の阿賀野川を横断する、経年112年、延長約1.2km、全69連(鋼トラス4連と上路プレートガーダー65連)の鉄道橋りょうです。大正元年に設置されて以降、豊富な水量を誇る阿賀野川を渡る橋りょうとして、現在まで列車の安全安定輸送に貢献してきました。(図-1)
 一方で、阿賀野川における治水事業では、新潟市周辺等の主要地区を洪水から守ることを目的とし、大正4年以降、改修工事が行われてきました。堤防の整備が進む一方で、阿賀野川橋りょうは建設当時の高さとなっており、阿賀野川の堤防と鉄道との交差部において、堤防の必要高さが約1.8m不足している状況となっていました。

2. JR 羽越本線阿賀野川橋りょうと洪水について

図-2 阿賀野川橋りょうと堤防の交差状況

 阿賀野川橋りょうと堤防の交差部は、過去の河川改修工事により、図-2に示すとおり堤防Aが整備され、堤防と橋りょうの開口部を少なくする対策が行われてきました。しかし、依然切り欠き部は存在し、治水上のボトルネックとなっていました。そのような状況で、平成23年7月新潟福島豪雨が発生し、阿賀野川においては過去最大の洪水流量を記録、阿賀野川橋りょう交差部から越水する可能性があり、消防団により切り欠き部に1,657袋もの土嚢積みが実施されました。また、令和元年東日本台風の際にも、約460袋の土嚢を積む水防活動が行われています。(図-3,4)

図-3 洪水時の阿賀野川橋りょう※1(平成23年7月新潟福島豪雨)
図-4 鉄道交差部における水防活動※1(令和元年東日本台風)

3. 羽越本線阿賀野川橋りょう改築工事について

(1)改築工事の概要

 近年の災害の激甚化や地域の高齢化、人手不足などの背景から、交差部における治水安全度の向上が急務となり、国土交通省北陸地方整備局阿賀野川河川事務所が主体の羽越本線洪水防止連携整備事業のなかで、JR 羽越本線阿賀野川橋りょうの改築工事を令和2年から令和4年にかけて実施しました。
 改築工事について、治水安全度を早期に向上させるため、全69連の桁の内、図-5及び図-6に示すとおり堤防交差部のみ1連を架け替え、橋りょう下部に特殊堤防を設置し、堤防高を約1.6m嵩上げする形で改築を実施しました。この際、堤防高を確保するため、改築後の橋りょうは桁中央部の桁高を可能な限り薄くする必要がありました。そのため、桁中央部のフランジ幅を575o、フランジ部材厚を50oと支承部より厚くすることで桁の強度を高め、桁中央部の桁高を500oまで薄くし、特殊堤防の高さを確保しました。その結果、桁重量が従来の約3倍となったことから、橋脚の補強も併せて実施しました。施工は鉄道運行に支障が無いように、各種計測機器を設置し、軌道及び基礎の変位に対し常時監視する体制のもと施工しました。

図-5 阿賀野川橋りょう改築イメージ図
図-6 改築後の阿賀野川橋りょう縦断面図・横断面図

(2)下部工の施工

 従来の橋脚はレンガ造の橋脚で、木杭基礎となっていました。調査の結果、レンガ造の橋脚は健全であり、荷重条件変化に対応するため、図-7,8のとおり、橋脚に対してRC巻き補強を実施しました。また基礎については、掘削する範囲を最小限に止め可能な限り工期を短縮するため、仮設材である鋼矢板とフーチングを接続することで橋脚との一体化を図る、シートパイル基礎による基礎補強を実施しました。

図-7 下部工構造概要
図-8 シートパイル基礎施工状況

(3)上部工の施工

 従来の桁構造は、図-9に示すとおり、上路プレートガーダーで、橋マクラギ構造となっていました。桁中央部を薄くするため、改築後の桁は、下路プレートガーダーで、マクラギ抱き込み式構造としました。
 桁の架け替えにおいて、鉄道運行への影響を最小限とするため、最終列車通過後から始発列車通過までの約8時間で、レールの取り外し、既設桁の撤去、特殊堤防(鋼製)の設置、新設桁の設置、レールの復旧、各種検査などを実施しました。架け替えには650tオールテレーンクレーンを使用し、鉄道の架空線及び高圧配電線に支障することを避けるため、図-10に示すとおり、コの字型の吊天秤を使用し架設しました。桁の架け替え後、試運転列車で桁・橋脚の健全性を確認し、無事予定の時間内で架け替えを完了しました。(図-11)

図-9 改築前後の桁及び軌道構造
図-10 新設桁架設状況
図-11 試運転列車通過確認

4. 本事業における効果

 本事業におけるJR 羽越本線阿賀野川橋りょうの改築工事は、令和2年11月より着手し、令和4年3月までの約1.5年で治水上のボトルネックに対する暫定的な対策を実施しました。堤防高が約1.6m高くなったことにより、治水安全度を向上させることが出来ています。北陸地方整備局阿賀野川河川事務所をはじめ、関係の皆様のご協力に深く感謝いたします。

図-12 阿賀野川橋りょうの改築後の様子

資料引用

※1 国土交通省 北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所ホームページより (一部加筆)
   URL:https://www.hrr.mlit.go.jp/agano/jigyou/kasen/sagari.html

参考文献

アクセス

「JR 羽越本線阿賀野川橋りょう」周辺地図(Google Map)の表示