第50回(平成26年4月30日)
豪雪地域を走る上越新幹線
1.上越新幹線大宮新潟駅間の開業
関東平野から三国山脈を貫通し、日本有数の豪雪地帯である越後平野までその距離約270km
をわずか2時間で縦断する上越新幹線は日本の社会基盤を支える重要な交通網として活躍をしています。
高度経済成長によって日本経済がめざましい発展を遂げる中、新幹線鉄道網による高速ネッ
トワークを全国にわたって整備することを目的とし1982年に上越新幹線が大宮駅と新潟駅間
において開業しました。「お客さまを目的地へ安全かつ快適にお届けする」という役目を、
開業以来32年間にわたり実現してきました。
その32年という歴史の間には、まだ記憶に新しい2004年10月23日に発生した中越地震に
より、「とき325号」の脱線、越後湯沢駅と新潟駅間が最長約2ヵ月にわたり不通になる事態
もありましたが、お客さまに事故や怪我を負わせることなく、これまで日本の重要な交通網と
して社会と経済に貢献しています。
2.大山脈と豪雪を乗り越える
上越新幹線の特徴は、何と言っても群馬県から新潟県にかけて山脈を横断するため長大トンネルが連続していることです。また新潟県側は日本有数の豪雪地帯でありながらトンネル以外の区間は高架橋がその大半を占めていることから、水をあたためて高架橋に散水するスプリンクラーによる消雪設備やスノーシェッドなど雪による輸送障害を防ぐための設備を備えています。
3.世界最長(当時)の山岳トンネル「大清水トンネル」
上越新幹線は三国山脈を横断するため、大宮駅と新潟駅間の約40%がトンネル区間を走行しています。上越新幹線には長大トンネルがいくつも存在し、その中で最も長いトンネルは上毛高原駅と越後湯沢駅の間にある大清水トンネルです。
大清水トンネルは日本列島の背骨の一部にあたる谷川岳を貫き、全長22,221mのトンネルとして、当時、イタリアとスイス国境にあるシンプロントンネルの全長19,803mを抜いて世界最長の山岳トンネルとして話題となりました。
大清水トンネルの施工は、群馬県側では谷川・保登野沢の2工区、新潟県側では万太郎・仙の倉・松川・湯沢の4工区の計6工区に分割して施工されました。各工区のトンネル掘
削工法は地形、地質、湧水の程度、土被り、工区延長によって掘削工法が選定されています。谷川・湯沢工区では『上半先進工法』により施工されました。保登野沢・万太郎工区で
は地質が堅硬で片押し延長が約5kmと長いことから『全断面掘削工法』により施工されました。また、仙の倉工区では湧水や岩の亀裂等を考慮して『底導先進工法』、松川工区では『きのこ形掘削』、『ショートベンチ工法』により施工されました。
万太郎工区全断面掘削状況
工事中の異常湧水など多くの苦難を乗り越え、大清水トンネルは1979年1月25日に関係者約400人が参列する中、貫通の日を迎えました。工事着手から約8年間の歳月を要しました。
4.上越新幹線の豪雪対策
豪雪地帯を走る上越新幹線は、地上の雪害対策として上毛高原駅と新潟駅間のトンネル以外の区間に自動散水システムが導入されています。
自動散水システムとは約3kmおきに消雪基地を配置し、消雪用の水を10℃前後まで温めます。そして降雪検知器により、雪の降り出しが確認されると自動的に線路脇に設置されているスプリンクラーが動き出し、温水を撒いて線路上の雪を融かす設備です。
また、自動散水システム区間以外にはトンネル前後に積雪や雪崩などの雪害対策としてスノーシェッドが設置されています。これらの設備により豪雪地域での高速運転を可能にしています。
5.おわりに
上越新幹線が首都圏と新潟を結び32年の歳月が経過しました。「お客さまを目的地へ安全かつ快適にお届けする」大きな役割を担い、三国山脈を貫き豪雪地帯を高速走行する上越新幹線は日本の貴重な土木財産と言えるでしょう。
参考文献
上越新幹線工事誌(水上・新潟間)
基本データ(上越新幹線大宮〜新潟)
延 長:269.5km
工 期:約11年
開 業:1982年11月15日
アクセス
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