第34回(平成24年4月27日)

姫埼灯台 〜現存する日本最古の鉄造灯台〜(佐渡市)

鉄造灯台の役割

 新潟港を出航した船舶が、佐渡島の玄関口である両津港に向かう際、左舷の岬の先端に白い灯台が見えてきます。これが姫埼灯台です。
 新潟港と両津港を往復する定期船が、両津港に入港する際に変針目標としており、佐渡市民のライフラインを支えている離島航路の航海目標として重要な役割を担っている灯台です。
上空から佐渡島姫埼を望む
上空から佐渡島姫埼を望む

 この灯台は、明治28年12月10日に佐渡島姫埼に建てられ、建設後百年以上の年月を重ねた今も、当時のままの姿で活躍する鉄造りでは日本最古の灯台です。
 当時の鉄造灯台の建設技術をしのばせるものとしての希少価値が評価され、その歴史的・文化財的価値が高いとして、昭和62年に、灯台施設調査委員会(日本航路標識協会)において、明治期に建設された全国68基の灯台の中でも、特に貴重な施設であり改修に際しては、専門委員会に諮り改修方法を検討する必要があるとされる、Aランク(23基)に分類されました。
上空から姫埼灯台を望む
上空から姫埼灯台を望む
姫埼灯台全景
姫埼灯台全景

灯台のこだわり

 灯台の構造部は、4層からなる6角形の櫓型で、1階・2階・灯室及び階段室は鉄板巻き構造であり、鋼板や山型鋼の接合部は全てリベット止めで固定されており、内部の昇降用の青銅鋳物製の螺旋階段を上ると、4階には回転灯器(灯台の光源)を設置している灯室があります。
 灯室の扉を開け外の踊場に出ると本州側の山々や佐渡海峡が一望できます。
 内部1階の床は、花崗岩張り、2・3階は板張りとなっており、天井及び壁は檜の板張りで、1階の腰壁及び2・3階の壁の表面には木目模様が手書きで描かれているなど、当時のインテリアとしての西洋建築の技法が残った、おしゃれな灯台です。
姫埼灯台遠景
姫埼灯台遠景
姫埼灯台近景
姫埼灯台近景
インテリア  インテリア  インテリア
インテリア  インテリア  インテリア
灯台内部の西洋建築のインテリア

永遠に明かりを灯し続ける"116歳"

 平成3年度に、施設の保全のため耐震構造調査を実施したところ、構造材である鋼材の成分が、現在のJIS規格と比較して、燐の含有量が2倍以上と多く、引張強度・伸率が小さい等の材料特性が異なり溶接性が悪いことや、柱脚部のアンカーボルトの腐食及び外壁下部の鋼板等の腐食が確認されました。
 また、灯台の構造物全体の安定性を解析したところ、1層及び4層にはブレ−スが無く、1層部分の柱の強度及び剛性が不足しており、建替え又は大規模な構造体の補強が必要と判明しました。
 平成5年に、これらの調査分析結果を基に、海上保安庁において学識経験者による、灯台施設の保全に関する委員会(灯台施設保全委員会)を開催し審議した結果、原形保存による補強が決定され、平成6年度に構造体の補強や外壁の補修等の整備工事を実施しました。
 灯台の建設から116年が経過しましたが、これからも航行船舶の安全のため、冬の日本海の厳しい風雪にも耐え、永遠に明かりを灯し続けていくことでしょう。

各賞を受賞

 平成10年には、世界灯台100選(国際航路標識協会:国内5灯台)及び、日本灯台50選(海上保安庁募集:新潟県1基)に、平成21年には、安全な船舶航行に貢献し我国の海運業等を支えた灯台等建設の歩みを物語る近代産業遺産群(経済産業大臣認定:国内24灯台)に選定されています。

参考文献

  • ほっとほくりく2002年10月号

    基本データ

    姫埼灯台の概要
  • 所 在 地 新潟県佐渡市
  • 塗色構造 白色塔形
  • 灯  質 単閃白光 毎6秒に1閃光
  • 光  度 130,000カンデラ   
  • 光達距離 18.0海里(約33.3km)
  • 北  緯 38度05分13秒   
  • 東  経 138度33分45秒
  • 高  さ 14.2m(地上から構造物の頂部まで)
           41.5m(平均水面から灯火中心まで)
           12.1m(地上から灯火の中心まで)
  • 管理官署 新潟海上保安部
     設置した当時は、2名の職員が灯台に常駐し管理していましたが、昭和37年に無人化され、現在は、新潟海上保安部が巡回により管理しています。

    アクセス

  • 両津港より、車で約30分(L=14km)
  • 小木港より、車で約100分(L=47km)

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