第32回(平成24年 4月13日)
山古志の台地を支える東竹沢第1号・第2号砂防堰堤(長岡市山古志)
芋川流域の概要
芋川は新潟県の中央部に位置し、流域面積38.4km2、流路延長17.2km、平均河床勾配1/70の河川である。信濃川水系魚野川流域の右支川で、猿倉岳(標高679m)付近を源頭部として北から南に流下し、魚野川に合流する。流域内には第三紀鮮新世〜第四紀新世の地層が分布し、それらは主に泥岩、砂岩泥岩互層、砂岩などの堆積物により構成されている。芋川流域は地質が新第三紀以降の比較的新しく脆弱な堆積岩であり、風化に弱く、地下水などの影響により容易に粘土化することから、地層の亀裂と相まって、我が国有数の地すべり地帯としてしられています。
大規模な河道閉塞
平成16年10月23日17時56分頃、新潟県中越地方においてマグニチュード6.8の地震が発生し、震源に近い川口町(現長岡市川口)では震度計による観測が始まって以来初めて震度7が観測された。この地震により、新潟県中越地方を中心として多数の土砂崩壊、地すべりが発生した。
中でも震源に近い芋川流域では土砂崩壊、地すべりにより生産された多量の土砂が河道に堆積し、55箇所の河道閉塞を形成した。
東竹沢地区で生した地すべりに伴う河道閉塞は、閉塞高が30mを超える大規模なものとなりました。
東竹沢地区の河道閉塞に対する恒久策
東竹沢地区の河道閉塞対策については、上流の木籠地区に浸水被害を及ぼしていることから、元河床まで閉塞土塊を撤去する案と現状(仮排水路)の呑口標高(149.5m)のまま閉塞土塊を固定する案が考えられました。元河床は仮排水路より19.5m低く、撤去する土塊量は565,000m3と膨大な量が推定されたこと、閉塞土塊を全撤去し、木籠地区の湛水を解消したとしても、当該地区の安全性を確保するには長い年月を要することなどから、避難住民の早期帰村を支援する観点から、現状のまま砂防堰堤2基で閉塞土塊を固定することとなりました。
東竹沢第1号・第2号砂防堰堤
◆施工の効率化・円滑化を図りながら
高さ30mの閉塞土塊を固定する砂防堰堤が、基礎部の支持力を考慮し、2基階段状に施工されました。下流側の第1号は、基幹施設であることを勘案しレディーミクストコンクリートで施工されましたが、上流側の第2号は、災害復旧に使用されるレディーミクストコンクリートが各災害現場に円滑に供給されることに配慮し、砂防ソイルセメント(INSEM工法)が採用されました。結果として、現地発生土の有効利用を図ることができました。INSEM材の混合は、自走式土質改良機を採用し効率的に作業を実施しました。コンクリートを使用する第1号堰堤についても、コンクリートポンプ車を使用することにより日打設量、段取り替え等の効率化を図るとともに、仮設構台の設置により作業半径、資材の荷下ろし区等の作業効率化を図り、工期の短縮を実現しました。
◆多様な地盤改良を実施
第1号砂防堰堤の左岸非越流部及び第2号砂防堰堤は、閉塞土塊(平均N値5程度)を地盤改良し設置されています。地盤改良は、面的な改良に中層混合処理工法DCS、INSEM盛土、部分的改良に高圧噴射撹拌工(D-RJP)、薬液注入工、置き換えコンクリートと多種な工法が採用されました。
◆幾多の困難を克服して
工事は、山古志地域の皆さんの帰村目標である平成18年秋を目標に進められました。東竹沢地区周辺においては、国道291号線の災害復旧があり、工事期間中の全面通行止めに対し、工事現場内の工事用道路を迂回路として利用する等、他機関との工程調整を図りながら工事の進捗を図り、なおかつ、冬期間の降雪により工事中止が余儀なくされる等、劣悪な作業条件のなか、1年9ヶ月(実工期約1年)平成18年12月に堰堤工事が完了し、地域の安全・安心が確保されることとなりました。
東竹沢第1号・第2号砂防堰堤は、中越大震災の象徴的な構造物として地域の発展を支えて行きます。
参考文献
湯沢砂防事務所ホームページ
URL
http://www.hrr.mlit.go.jp/yuzawa/
基本データ
東竹沢第2号砂防えん堤 <上流側>
(INSEM-SB・・・中詰はインセム工法、上流側は矢板+下流側はコンクリート板):
高さ11.5m/長さ112m
東竹沢第1号砂防えん堤 <下流側>
(重力式コンクリート):高さ14.5m/長さ106m
基礎地盤改良 2号(越流部H = 5.5m、非越流部 H = 12.0m)
・・・深層混合処理工法
アクセス
長岡市東竹沢
JR上越線北堀之内駅から車で20分
関越自動車道「堀之内IC」から車で20分、約10q
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