第19回(平成22年3月24日)

林業の町・山北の地元産材を活用した木製橋梁  八幡(やわた)橋(村上市)

事業の経緯と目的

 架け替え前の旧八幡橋は、昭和27年に架設された鉄筋コンクリート造の橋で、建設から50年を経過し老朽化が進み、危険な状態となったことから、旧山北町の単独事業として平成12年度に架け替え事業に着手しました。
 本事業は、単なる地域生活路線としての橋梁整備だけでなく、当時同時期に行われた河川整備や、隣接する下水処理場の環境整備と併せ、木材の町「山北町」のシンボル橋の建設として、林業をはじめ観光や各種地元産業活性化の起爆剤となることの願いを込めた事業でもありました。
 工事は平成13年7月に着手し、平成14年11月に竣工しましたが、工事期間中は季節はずれの台風による作業ヤードの浸水等があったものの、工事に関わった皆さんの努力により、事故も無く順調に計画よりも早く完成し、一日も早い完成を待ち望む地域の皆さんの期待に応えることが出来ました。
アーチ中央部のバルコニーから望む下流の景色 左岸側下流からの全景

施設の概要と特徴

 八幡橋は、橋長42.4m、有効幅員7.0m、2車線、片側歩道付き2径間の単純下路式アーチ橋です。床版はプレストレスト・コンクリート(PC)製とし、本橋に設置された消雪施設による橋体劣化・腐食に対して防止対策を講じています。また、横桁部材を鋼製桁とすることで桁高を抑え、桁下余裕の確保と橋軸直角方向の剛性を高める構造を採用しています。さらに、PC床版設置により車両用防護柵の設置が可能となり、他構造の車道橋と同等の安全性が確保出来ています。
 2連アーチの中央部にはバルコニーが設けられ、初夏の鮎釣り、夏の日本海に沈む夕日や秋の鮭捕獲など、四季折々の風景が楽しめる機能も持っています。隣接するゆり花温泉交流の館「八幡」と公園施設、河川親水護岸が一体となった地域の憩いの場として、名勝天然記念物「笹川流れ」の北の玄関として位置づけられる場所のシンボル橋となっています。
親柱には路線名、「八幡橋」の橋名と町花「いわゆり・やまゆり」を表示
バルコニーで景色を楽しむ様子

地域資源の活用

 村上市の山北地域(旧山北町)は総面積28,390haのうち、約93%が山林で、古くから林業の盛んな町でしたが、輸入木材の影響や景気の低迷により、他の産業にも増して林業が不振な状況となっている中で、小中学校及び各集落集会場等の建築は勿論のこと、野球場のダックアウト、土木施設等、様々な施設への地元産材の活用の試みがなされて来ました。
 この八幡橋にも地元山北産材の杉を集成材加工し主要構造部材に使用したほか、直接手に触れる歩道の高欄等に町産材を総使用量で約140m3 使用しています。

施設の維持管理上の創意工夫点

 八幡橋は、海岸に近いことから塩害と木部の腐食に配慮し、主要構造部の杉集成材接続部の金属板は全て溶融亜鉛メッキを施し、ステンレス製のボルト・ナット、ビスを使用しています。アーチ吊り金物部は、雨水により洗浄されるように工夫しています。また、橋に用いられている木材は、AAC加圧注入により防腐処理したうえに防腐防虫剤を塗装し、腐食対策を入念に行なっています。
 八幡橋は平成14年11月に竣功しましたが、建設時には安全性確認のための各種試験や、完成後の各種データ調査を行い、将来の保守・維持管理に備えて初期の基礎数値を記録保管することとしました。また、平成19年度には木部の塗装と接続金物の洗浄等を行ない、この橋が末永く地域の皆さんに愛され、活用してもらえるよう、継続的な点検・保守に努めています。

施設整備の効果と活用状況

 八幡橋が架けかえられたことで、橋につながる道が地域生活道路としての役割を取り戻すことができました。地元住民の皆さんには、暖かみのある美しい橋に歩道も整備され、木製の高欄とそこに設置された照明により安心して利用出来る、と評判が良く、地域の財産として大切に利用されています。

参考文献

  • 木橋資料館(福岡大学):

    基本データ

  • 路線名:村上市道(旧山北町道)碁石出戸線
  • 形 式:2径間単純下路式アーチ橋
  • 橋 長:42.4m
  • 有効幅員:7m
  • 竣 工:平成14(2002)年

    アクセス

  • 村上市勝木
  • JR勝木駅より 徒歩約5分(L=0.4km)

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