第15回(平成22年2月8日)

高さ40mの海上散歩が楽しめる  長者ヶ橋(佐渡市)

昔は船でしか往来できなかった急峻な地形

架橋位置図  主要地方道佐渡一周線は、佐渡島の海岸線をほぼ一周し、島内交通網の幹線道路に位置づけられ、観光や地域産業拠点へのアクセスや、島民の生活を支える日常生活道路であり、その総延長は約170kmとなっています。
 このうち、長者ヶ橋は新潟県佐渡市(旧小木町)深浦地内に架かっており、隣接する沢崎地区から深浦地区への交通手段は、過去には船に頼るしかありませんでした。急病人を船で運ぶ途中に転覆したこともありました。後に、町道で迂回するルートが完成したものの、その町道は道幅が狭く、見通しが悪いなど不安の多い道路でした。
 この状況を解消するため、昭和50年代から架橋の必要性の声があがり、実現に向け文化庁との協議が始まりました。深浦地内は佐渡弥彦米山国定公園内にあり、かつ天然記念物「枕状溶岩」を有する名勝指定地であるため、橋脚を少なくすること、桁高を小さくすること、海上から高くならないことなどの厳しい条件が付き、加えて景観にも配慮する必要がありました。その後ようやく協議が整い、平成8年度から道路改築事業に着手し、平成14年度に完成しています。

県内初の形式のエクストラドーズド形式を採用

照明  景観への配慮、施工性及び経済性、維持管理を含めて総合的に検討した結果、最も適した橋梁タイプがエクストラドーズド橋でした。この橋は、岐阜県の徳之山八徳橋(2006年)や青森県の三戸望郷大橋(2005年)などのように、近年我が国において採用されていますが、新潟県では初めての橋梁形式です。
 この形式の選定にあわせて、地域住民や有識者による「周辺開発検討委員会」で橋梁の美装化についても検討され、照明、高欄、親柱、歩道には、宿根木(しゅくねぎ)集落の町並みや地域の建築物をデザインモチーフとして採用し、地域性を表現するための工夫を凝らしています。その例として、照明は扇の飾りを取り入れたデザインで製作されていますが、これは近くの宿根木集落の民家の軒下飾りを表したものであり、高欄のデザインは窓格子及び千石船の格子をモチーフにしています。

長者ヶ橋が完成したことによる効果

渡り初め  長者ヶ橋の完成によって、第一に、これまで深浦地区までしか運行していなかった路線バスが、沢崎地区まで延伸され、交通の利便性が飛躍的に向上しました。竣工式直後には、小木発沢崎行きの第1号路線バスが運行されました。第二に、救急車両等が通行可能となり、搬送時間の大幅な短縮が図れるようになりました。第三に、深浦地区と沢崎地区の交流・連携の強化がとれるようになりました。第四に、長者ヶ橋自体が観光の名所となりました。このように、長者ヶ橋は隣接地域や島内観光の振興、活性化に寄与するなど、効果が多方面にわたっています。

海上橋ゆえの難工事

冬季の海上の様子  長者ヶ橋は海上橋であり、冬季は海からの季節風が強く、高い波が襲います。このような厳しい気象条件下での工事であったことや、離島であるために特殊な材料や機械が島内で調達できないことなど、幾多の苦難がありました。しかしながら、関係者の努力、工夫により着実に工事を進めてきた結果、約5年の歳月を経て竣工することができました。

ぜひ長者ヶ橋を見に来いっちゃ!

 この長者ヶ橋は、近代的な土木施設であるとともに文化の薫りが高く、既にある佐渡島の歴史・文化とも融合しており、多くのみなさんから足を運んでいただいており、南側に隣接する深浦駐車場は国土交通省の「とるぱ」※にも指定されています。日本海に囲まれ、雄大な山・川を有し、自然あふれる佐渡島へ遊びに来いっちゃ!
※「とるぱ」:写真を撮るパーキングで、安全な駐車場と撮影スポットのセットです。
長者ヶ橋 遠景

参考文献

  • 国土交通省「とるぱ」公式HP: URL http://www.torupa.jp/index.html

    基本データ

  • 路線名:主要地方道佐渡一周線
  • 形 式:PC5径間連続 エクストラドーズド橋
  • 橋 長:294m
  • 竣 工:平成14(2002)年
  • 事業費:44億円

    アクセス

  • 佐渡市深浦
  • 両津港より 車約80分(L=47km)
  • 小木港より 車約15分(L=8km)

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