第52回(平成27年4月8日)

合計19qの地下世界が続く19本のトンネル群 〜奥只見シルバーライン〜(魚沼市)

1 経緯

 秘境奥只見にダムの建設計画が構想されたのは大正14年頃であるが、その頃から尾瀬沼に源を発する只見川の豊かな水量が注目されていた。そして昭和35年に田子倉ダムが完成し、続いて昭和37年に田子倉ダムの上流およそ30qの地点に奥只見ダムが完成した。
入口ゲート  この奥只見ダムの建設に先駆けて昭和29年から足かけ4年の歳月を費やして折立からダムサイトまで延長22qの資材輸送道路が建設された。この地区一帯は日本一の豪雪地帯であり雪崩などの危険性もあるため、延長22qのうち18qがトンネルという特殊なものであった。
 この資材輸送専用道路は昭和44年に電源開発鰍ゥら新潟県が譲り受け、およそ23億円の費用を投じて道路整備特別措置法に基づく有料道路として改築整備し、昭和46年8月に「奥只見シルバーライン」の愛称で営業を開始した。
 しかし、その後の社会経済情勢の変化等により事業廃止を余儀なくされ、昭和52年4月から一般道路(県道)として無料開放され、現在の主要地方道「小出奥只見線」に至る。
 現在もこの奥只見シルバーラインは、奥只見ダムや銀山平へのアクセス道路として、また、「魚沼から行く尾瀬」の主要道路として重要な役割を担っている。

2 奥只見ダムの工事用道路

 ダム地点は小出駅から約45q、標高600〜800mで本邦屈指の豪雪地帯のため積雪量が6mを超えることもまれではない。従って12月末から4月始めまで工事の中断を余儀なくされるうえに仮設備はすべて耐雪構造とし、工事中断期間中でも施設の維持のための除雪を行わなければならなかった。
 また、セメント、鋼材、木材などの各工事資材及び各機器など40万トンを超える膨大な物資は最寄りの国鉄(当時)上越線小出駅から工事現場まで運搬しなければならなかったが、従来の道路(県道石抱橋小出線(当時、現在は国道352号の一部)及びその延長林道)によると運搬距離40qを超し、小出−大湯間約10qは、ほぼ平坦であるが、大湯−ダム地点間は狭小急勾配、急カーブのうえ、途中、標高1,100mに達する「枝折峠」がある山岳地帯であり、冬期には5〜6mの積雪を見るため例年12月〜5月の約半年は交通が完全に杜絶する状況であった。
 工事の円滑な進捗のためには気象条件のいかんにかかわらず、この輸送量を確保する必要があり、このため資材輸送のための専用道路を新設した。 この道路は小出駅専用側線の資材集積場(現在の電源開発鰹ャ出電力所がある場所)を起点とし、延長10qの既設県道の大改修と延長約22q(うち約18qはトンネル)の工事用道路の新設を行う大工事で、工費約40億円と満3箇年の歳月とを要して昭和32年11月完成を見た。この後者の新設部分の道路が現在の「奥只見シルバーライン」である。
 新設道路の工事は全体を5工区に分け請負契約を行い、昭和29年12月から昭和30年11月にかけて着工した。この道路は路線総延長21.4q、うちトンネル部17.8q(最終的には18.1q)、有効幅員6.5m 2車線として計画された。トンネルに対しては主に全段面掘削工法を計画して、大型ジャンボー、ローダー、バッテリーロコ、コンプレッサー類の貸与あるいは請負業者持ちの大型機械により施工された。
 折立から仕入沢間(1工区から4工区および5工区の一部)は昭和32年9月19日に竣工した。仕入沢から八崎間(5工区の15〜18号隧道(現在の19号仕入沢トンネル))は、契約変更により隧道内にダム工事用取水路を設備することとしたので竣工は同年11月2日となった。
 13号隧道(現在の18号荒沢トンネル)においては昭和31年9月に月間(30日)進行275m、1日進行14m(9月6日)の記録を出した。これは全工区中の最高はもちろん、当時日本における隧道掘進の最高記録であった。
 工事従事人員は最盛期労務者数3,700人、全工期を通じ労務者延べ1,802,600人であった。
 また、工事のための犠牲者は44名の多きを数えたが、このうち17名は雪崩や凍死などの雪害によるものであった。

3 奥只見有料道路

 奥只見ダムが完成して目的を達成したこの工事用道路は、以降専ら奥只見発電所の保守管理の連絡道路として使用されてきた。
テープカット  奥只見ダム及びこの地域のすばらしい景観と大自然を求めて多くの人々がこの地を訪れるようになったが、勾配が急なしかもカーブの多い枝折峠を通る方法しかなく、極めて交通の不便な状況であったためこの専用道路の一般開放が強く叫ばれるようになった。
 昭和44年10月1日にこの道路を電源開発鰍ゥら無償で譲り受けた新潟県は、企業局で道路整備特別措置法に基づく有料道路事業として認可を受け、22億8,500万円を投じて建築限界確保のための盤下げ及び上部拡幅、白光岩交差部の拡幅、換気・照明・防災設備設置、料金所・駐車場建設などの工事を行い、昭和46年8月1日「奥只見シルバーライン」の愛称で営業を開始した。
 しかし、年間の通行車両台数は開業初期の計画台数20〜50万台に対しても10〜15万台にとどまり年々赤字が続き、また、昭和50年10月25日に落盤事故が発生するなど(補修工事のため昭和51年度は5月15日から一部営業し、6月13日から全線営業)、諸情勢の変化により、一般道路化を知事部局に要望し、昭和52年4月1日から無料開放した。
通行台数

4 主要地方道「小出奥只見線」

 電源開発鰍フ専用道路であったこの連絡道路は、新潟県への無償譲渡にあたり、昭和44年3月4日に県道(一般県道)小出停車場奥只見線として認定された。
管理事務所  昭和51年4月1日に主要な都道府県道(主要地方道)に指定され、同年10月12日に路線名を小出停車場奥只見線(廃止)から(主要地方道)小出奥只見線に変更して認定され現在に至っている。
 有料道路から一般道路化に伴い、昭和52年4月から道路の管理は新潟県企業局から土木部に移り、小千谷土木事務所小出分所(当時、現在は魚沼地域振興局地域整備部)で管理することとなった。
道路巡視やトンネル設備の運転・監視などは奥只見シルバーラインの起点部にある「奥只見シルバーライン管理事務所」で行っており、土曜・日曜も休むことなく年中無休で夜間も人員を配置している。
 奥只見シルバーラインは冬期の降雪や昭和53年4月にオープンした奥只見丸山スキー場などの関係から、1月上旬〜3月下旬は閉鎖しているが、その間も奥只見発電所関係者の通行やトンネル維持工事などのために管理を続けている。

トンネル諸元

1号折立スノーシェッド 延長 59.7m
1号折立(おりたて)トンネル
 延長 183.7m  S29竣工
(小計243.4m)

2号西ノ沢(にしのさわ)トンネル
 延長 169.0m S29竣工

3号神山(かみやま)トンネル
 延長 76.0m S29竣工

4号トンネル 4号猿沢(さるさわ)トンネル
 延長 100.0m S29竣工
スノーシェッド(4T〜5T) 延長 68.4m
5号駒見(こまみ)トンネル
 延長 37.3m S30竣工
駒見スノーシェッド 延長 98.6m
6号トンネル 6号真平(まだいら)トンネル
 延長 118.0m S30竣工
スノーシェッド(6T〜7T) 延長 43.9m
7号吹上(ふきあげ)トンネル
 延長 67.0m S30竣工
(小計533.2m)

8号小屋場(こやば)トンネル
 延長 73.7m S30竣工
スノーシェッド(8T〜9T) 延長 50.8m
(小計124.5m)

9号トトが沢(ととがさわ)トンネル
 延長 395.7m S30竣工

スノーシェッド(9T〜10T) 延長 110.0m

10号黒口スノーシェッド 延長 49.9m
10号トンネル 10号高平(たかひら)トンネル
 延長 481.1m S31竣工
10号山口スノーシェッド 延長 60.9m
高平スノーシェッド 延長 130.0m
(小計721.9m)

11号トンネル 11号栃ノ木(とちのき)トンネル
 延長 67.9m S31竣工
12号津久ノ又スノーシェッド 延長 90.0m
12号津久ノ岐(つくのまた)トンネル
 延長 1,603.0m S31竣工
スノーシェルター(12T〜13T) 延長 73.2m

13号トンネル 13号湯ノ沢(ゆのさわ)トンネル
 延長 2,263.7m S31竣工
13号湯ノ沢スノーシェッド 延長 25.0m
14号黒又(くろまた)トンネル
 延長 1,431.3m S30竣工
下居守沢蓋道 延長 19.9m
15号蕨沢(わらびさわ)トンネル
 延長 659.3m S31竣工
上居守沢蓋道 延長 15.2m
16号トンネル 16号居守沢(いもりさわ)トンネル
 延長 284.0m S31竣工
16号居守沢スノーシェッド 延長 55.3m
(小計6,587.8m)

スノーシェッド(16T〜17-1T)延長 144.1m

17号明神沢スノーシェッド 延長 69.5m
17号トンネル 17号明神(みょうじん)トンネル
 延長 3,920.0m S31竣工
(17-1号 延長 2,151.0m)
(17-2号 延長 1,769.0m)
下荒沢蓋道 延長 15.2m
18号荒沢(あらさわ)トンネル
 延長 3,070.5m S32竣工
18号荒沢スノーシェッド 延長 51.4m
19号トンネル 19号仕入沢(しいれさわ)トンネル
 延長 3,129.7m S32竣工
(小計10,256.3m)

延長総合計19,361.9m(うちトンネル18,130.9m)

付帯設備

換気設備
 トンネル内の自動車排気ガス等処理のため横坑又は立坑による換気所6箇所を設置し、排風機合計11台で換気。
照明設備
 トンネル内照明としてナトリウム灯を1,669灯設置
信号機
 入口ゲート及び17号トンネル内の銀山平方面出口との交差点部の2箇所に信号機を設置
高さ制限
 トンネル内は道路構造令の正規の建築限界を確保できないため高さ制限を3.7mとし、高さ制限バーを3箇所に設置
方向転換所 防災設備
 事故発生情報等を通行車両に知らせるため警報表示装置を10のトンネルの出入口等計23箇所に、道路情報板1基を入口ゲートに設置
 トンネル内火災事故に備えるため非常通報ボタン353箇所、消火器797本を設置
 自動車事故や急病人等の発生に備えトンネル内99箇所に非常電話を設置
 このほか、トンネル内緊急退避所を11箇所(うち3箇所は方向転換所(大型車対応))、屋外避難場所を5箇所設置
その他
 カーブや急勾配を運転者に知らせるためトンネル側面に、高所設置誘導標(発光点滅する矢印)を19箇所、水平線を3箇所に設置

参考文献

  • 奥只見有料道路建設記録「秘境をひらく」昭和46年 新潟県小千谷土木事務所
  • 阿賀野川水系只見川 奥只見発電所建設工事 工事記録 昭和37年 電源開発
  • 奥只見シルバーライン3年間のあゆみ 昭和49年 新潟県企業局
  • 新潟県の公営企業 40周年記念誌 平成3年 新潟県企業局

    アクセス

  • 魚沼市
  • JR上越線小出駅から車で約25分(約12q)
  • 関越自動車道小出ICから車で約20分(約11q)
    〜注 意〜
     奥只見シルバーラインは二輪車(バイク)、自転車や歩行者の通行はできません。
     また、トンネル内での駐停車は禁止されています。

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