第49回(平成26年4月30日)

国登録有形文化財 三条市水道局大崎浄水場(三条市)

1 三条市水道局大崎浄水場の概要

 三条市水道局大崎浄水場(現在は三条市建設部上下水道課大崎浄水場となっています。)は、三条市中新4420番地3ほかに所在し、昭和天皇御大典記念事業として昭和5(1930)年4月に起工し、昭和8(1933)年5月に竣工した水道施設です。
 五十嵐川沿いに建つ取水ポンプ場で取水し、原水を350m程離れた東方の浄水場へ引いています。浄水場には、主な施設として事務室棟、緩速ろ過池、送水ポンプ室、配水池などがあります。
 浄水場の技術的な設計は、内務省土木局技師、日本大学工学部長を務めた茂庭忠次郎(水道工学)が行っています。建物類の設計は新潟市の長谷川龍雄(建築学)が行っています。長谷川は文部省技手として旧松本高等学校(国指定重要文化財:松本市) 、旧第四銀行住吉町支店(国登録文化財:新潟市)を手がけています。
 緩速ろ過池や配水池、着水井などの水道施設の中核をなす建造物は、装飾を省いた機能的なデザインとする一方、取水ポンプ場ポンプ室や浄水場事務室棟、送水ポンプ室、量水器室などの人の目につく建物には、瀟洒で独創的なデザインが採用されています。創設当初の建造物の全てを良好に保存しつつ、現役で使われている全国的にも貴重な水道施設です。今日に至るまで現役で使われ続けていることは、創設当時における技術の確かさを裏付けています。質の高いこれらの施設は、設計者が明らかな点も特筆され、長く三条市の発展を支えてきた施設として重要なものとなっています。
 三条市水道局大崎浄水場の建造物12件は、国登録有形文化財登録基準(平成8年文部省告示第152号)の「一、国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当し、平成23年10月28日付で、国登録有形文化財(建造物)に登録されました。
現在のようす    竣工時

国登録有形文化財 物件一覧表
No.名称構造・形式・大きさ
1 三条市水道局大崎浄水場
取水ポンプ場 ポンプ室
木造平屋建、鉄板葺
建築面積132u
2 三条市水道局大崎浄水場
取水ポンプ場 門
コンクリート造
延長7.9m
3 三条市水道局大崎浄水場
事務室棟
木造平屋建、瓦葺
建築面積50u
4 三条市水道局大崎浄水場
旧番宅
木造平屋建、瓦葺
建築面積122u
5 三条市水道局大崎浄水場
1号・2号及び3号緩速ろ過池
コンクリート造、一部鉄筋コンクリート造
面積1,860u
6 三条市水道局大崎浄水場
洗砂場
鉄骨造平屋建、鉄板葺
建築面積19u
7 三条市水道局大崎浄水場
着水井(送水井)
コンクリート造
面積10u
8 三条市水道局大崎浄水場
調整池
鉄筋コンクリート造
面積132u
9 三条市水道局大崎浄水場
送水ポンプ室
鉄筋コンクリート造平屋、 一部地下1階建
建築面積199u
10 三条市水道局大崎浄水場
配水池
鉄筋コンクリート造
面積1,344u、機械室付
11 三条市水道局大崎浄水場
量水器室
鉄筋コンクリート造平屋建
建築面積3.9u
12 三条市水道局大崎浄水場
石造及びコンクリート造
延長13m

大崎浄水場配置図

2 各建造物の概要

取水ポンプ場ポンプ室

(1)三条市水道局大崎浄水場 取水ポンプ場ポンプ室

 五十嵐川右岸に位置し、木造平屋建、切妻造鉄板葺の建物です。全体としては端正な造形が施され、一見すると浄水場にあるポンプ室とは思えない容姿を示していて、瀟洒な外観となっています。

取水ポンプ場門

(2)三条市水道局大崎浄水場 取水ポンプ場門

 左右一対のコンクリート造の門で、親柱、袖壁、副柱からなるものです。取水ポンプ室と一体となって、取水ポンプ場の良好な歴史的景観を構成しています。

事務室棟

(3)三条市水道局大崎浄水場 事務室棟

 木造平屋建の建物です。赤いコンクリート瓦を用いながら反りを持つ神社本殿の流造風の屋根は、周囲景観にも馴染み、浄水場を代表する建物になっています。

旧番宅

(4)三条市水道局大崎浄水場 旧番宅

 水道局の旧官舎で、桁行を二分し二戸を設けた長屋形式の建物です。昭和初期の浄水場施設の一端を物語る建物となっています。

(5)三条市水道局大崎浄水場 1号・2号及び3号緩速ろ過池

1号・2号及び3号緩速ろ過池  鉄筋コンクリート造のろ過池です。各池底の中央に集水溝、その左右には支線が設けられ、ろ過した浄水を集める仕組みになっています。創設以来、現役で使われているろ過池です。

洗砂場

(6)三条市水道局大崎浄水場 洗砂場

 切妻造鉄板葺の建物で、緩速ろ過池に配されたろ過層の砂類を洗浄するための施設です。現在も緩速ろ過池のろ過層の砂の洗浄に用いられています。

着水井(送水井)

(7)三条市水道局大崎浄水場 着水井(送水井)

 鉄筋コンクリート造の円筒形の井戸です。取水ポンプ場から送られた原水の水圧を調整する着水井の働きとともに、その後ろ過池へ原水を流入させる送水井の役割を兼ねています。

調整池

(8)三条市水道局大崎浄水場 調整池

 鉄筋コンクリート造で、ろ過を終えた浄水を配水まで一時的に貯水して送水量を調整するための施設です。上部をコンクリート造の屋根と盛土で閉塞し植栽を施し、6基の換気筒を配置しています。

送水ポンプ室

(9)三条市水道局大崎浄水場 送水ポンプ室

 鉄筋コンクリート造平屋建、一部地下一階の建物です。ポンプを配置し、ろ過を終えた浄水を配水池まで圧送する施設です。ロンバルディアバンドや半円アーチを用いるロマネスク風の重厚な外観となっています。

配水池

(10)三条市水道局大崎浄水場 配水池

 コンクリート造で、一般への配水に備え一時的に溜め置くための施設です。上部盛土の上には36基の換気筒が配置されています。また、南側中央には、鉄筋コンクリート造平屋建の機械室があります。送水ポンプ室のロマネスク風の様式とは異なる古典様式の装飾が施されています。

量水器室

(11)三条市水道局大崎浄水場 量水器室

 鉄筋コンクリート造平屋建で、街中に配水される浄水の水量を量るイギリス製400mm水銀式ヴェンチュリーメーター(自記式)が置かれていた施設です。外壁は洗出し仕上げで、壁面頂部にはロンバルディアバンドの装飾を廻らしています。

門

(12)三条市水道局大崎浄水場 門

 大崎浄水場の門は、浄水場敷地の西側中央にあります。花崗岩積でコンクリートを充填した高さ1.8mの親柱を4.4m間隔で配し、その左右に袖壁を矩折れに延ばして6本の副柱を配し、モルタル洗出し仕上げとしています。当初の錬鉄製扉でオリーブ色のペンキ塗の門扉は失われていますが、堂々とした造りの門は、昭和初期の浄水場施設の風格をよく示しています。

3 大崎浄水場の特色

 大崎浄水場は、三条においては明治26(1893)年以来、地元における上水道敷設の要望やバルトンによる衛生調査もあり、継続的に上水道の敷設が熱望されてきました。その後、大正元(1912)年、大正2(1913)年、大正5(1916)年と断続的に計画は練られましたが、いずれも財政的観点から成案を見るには至らず、三条に水道施設が開設されたのは、昭和8(1933)年になってのことでした。
 昭和8(1933)年の工事において浄水場として選定された場所は、かつて明治時代に取水口を計画した大崎、籠場近傍の地で、ここに技術面では茂庭忠次郎の指導のもと、関係する建造物は新潟市において建築事務所を開設していた長谷川龍雄によるものでした。
長谷川は戦前期、新潟において旧第四銀行住吉町支店、新潟市公会堂など、新潟市を代表する建物を数々手掛け、特に正統的な様式建築では当地において追随を許さない手腕を発揮していました。なお、当時の水道施設に建築家が直接関わることは稀な事例でした。そのため現存する建物群を一瞥しただけでも、大崎浄水場が極めて高い質をもって長谷川によって設計の行われたことが分かります。
 一方、上水道を技術的な面から見れば、取水を五十嵐川が平野に出る際となる大崎・籠場の地で行うことは、水利権の問題から考えても極めて妥当と言えます。更に、配水池を隣接する要害山中腹に置くことは自然流下による配水を考えた場合極めて有効です。
配水池に登ると三条の町並みから背後の弥彦山まで一望にすることが可能です。要害の山はまた、上水道にとっては天然の配水施設であったわけです。このように、三条の上水施設は自然条件を極めて上手く取り込みながら、町に合致した施設をここに造り上げたと見ることができます。
 そして、これらの施設は70 余年にわたって手厚く保守管理を受けながら、市民の安全・安心のため、浄水供給が継続的に行われきたもので、今後とも市の発展を支え続けることでしょう。 

(「5 大崎浄水場の特色」 平山育男 2012 『国登録有形文化財三条市水道局大崎浄水場建造物詳細報告書』 三条市 一部改変)

参考文献

  • 平山育男 2012 『国登録有形文化財三条市水道局大崎浄水場建造物詳細報告書』 三条市

    アクセス

  • 自動車の利用:北陸自動車道 三条燕ICより国道289号で20分

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