第37回(平成24年5月7日)

「信越大橋」(妙高市)

信越県境に位置し、周辺環境の眺望豊かな「信越大橋」

 新潟県と長野県の県境に架橋する信越大橋は、新潟と関東圏をつなぐ国道18号を代表する橋梁です。新潟県と長野県境付近は、日本での有数な豪雪地域であり、雪による交通障害が発生する難所でありました。そのため、この交通の難所を解消するために、平成3年度から工事を着手し平成9年度の妙高野尻バイパスの全線開通と同時に供用を開始した橋梁です。
 信越大橋は、「周辺環境との調和」「プロポーションの配慮」「ランドマークとしての役割」「親しみの持てる橋」のデザインコンセプトにより設計されました。建設から14年たった現在では、周辺環境との調和、特に妙高山周辺とのバランスの良い借景効果が優れていることが感じられます。架橋地点は妙高山麓の眺望が最も良好な位置にあるために、ドライビングポイントや県境としてのランドマークとして使われています。特に、妙高山周辺の絶好の撮影ポイントとして、多くの写真愛好家が利用しています。
 現在の県境は、上信越自動車道(黎明(れいめい)橋)、国道18号(信越大橋)、旧国道18号(一之橋)、関川関所跡に通じる(長寿橋)が復元架橋されており、江戸時代から現在までの橋の役割と先人の苦労が偲ばれます。
妙高山を背景に4橋を見る
妙高山を背景に4橋を見る

豪雪に耐え抜く「信越大橋」

 信越大橋が開通するまでの国道18号の道路状況は、降雪や路面凍結によるトラブルが多く発生していた交通の難所でした。特に長野県側の「赤川スノーシェッド」箇所はきつい勾配の連続するヘヤピンカーブや道路幅員の狭さから、交通障害の発生箇所となり、その解消のために信越大橋の完成が待ち望まれていました。
 信越大橋の完成から、交通の難所は解消され、豪雪時でもスムーズな交通が確保されています。
旧国道18号 赤川スノーシェッド
旧国道18号 赤川スノーシェッド

阪神・淡路大震災の教訓を生かした「信越大橋」

 平成7年の「阪神・淡路大震災」の被害状況を踏まえ信越大橋では、耐震性の向上に重点をおいて設計が行われました。特に、「阪神・淡路大震災」では水平力分散型支承の被害が少ないことが報告されていました。これらの被害の特徴を受けて、信越大橋における支承は、すべて水平力分散型ゴム支承を採用しました。水平力分散型ゴム支承は、地震によって橋にかかる水平力を各橋脚に分散し伝達させることができます。
水平力分散型ゴム支承の設置状況
水平力分散型ゴム支承の設置状況

○水平力分散型ゴム支承(豆知識)

 上部構造の重量を支持すると同時に、ゴムの柔らかいせん断剛性を利用して上部構造の固有周期を長くすることにより、地震時の上部慣性力を低減可能とし、1支点のみでなく、複数の下部構造に慣性力を分散させる支承です。

関川関所跡を眼下に 「信越大橋」

 信越大橋の眼下には、「関川関所跡」があります。
 「関川関所」は越後頚城と江戸表を結ぶ北国街道の要所「関川」の地にありました。現在は旧国道18号の新潟県と長野県境の川「関川」に架かる「一之橋」の手前に「関川関所道の資料館」として、当時のままに再現しています。「関川関所」は天正二年(1572)、上杉景勝が関山付近にあったものをこの地に移したと言われ、明治二年(1869)その300年近く続いた歴史を明治維新と共にその役割を閉じました。
車社会を向かえた現在でも県境の道は交通の難所であることは間違いなく、今、信越大橋は「関川関所跡」を眼下に県境を跨いでいます。
関川関所跡を眼下する「信越大橋」
関川関所跡を眼下する「信越大橋」

参考文献

  • 一般国道18号妙高野尻バイパス 編集:国土交通省 高田河川国道事務所

    基本データ

  • 所在地:長野県上水内郡信濃町野尻から新潟県妙高市関川
  • 構造形式:PC7径間連続箱桁橋 PC2径間連続箱桁橋 PC2径間連続中空床版橋
  • 橋長:902.0m、幅員:14.50m
  • 竣工:平成9年(1997年)

    アクセス

  • 上信越自動車道 信濃町ICから車で約10分
  • 上信越自動車道 妙高高原ICから車で約5分

    「信越大橋」周辺地図(Google Map)の表示