第33回(平成24年4月20日)

日本海東北自動車道 阿賀のかけはし
〜阿賀野川における自然生態系との共生を目指して〜(新潟市江南区・北区)

日本海東北自動車道

 日本海東北自動車道(以下「日東道」という。)は、新潟県新潟市(新潟中央JCT)から日本海に沿って北上し秋田県河辺市(河辺JCT)を結ぶ総延長約250 kmの高速道路です。新潟県内では新潟中央JCTから朝日まほろばIC間約70 km(平成24年4月現在)が開通しています。

阿賀野川の中州にサギの営巣地

 日東道の新潟空港IC〜豊栄新潟東港IC間で交差する阿賀野川付近には、大島と呼ばれる中州がありますが、環境影響評価では特に問題とされていませんでした。しかし、その後の調査により新潟県で最大、国内でも有数のサギの営巣地が確認されました。
 この中州は孤島となっているため、人間や天敵となる動物の侵入がほとんど無く、周辺に河川や水田等えさ場があること、またサギが営巣する樹木も適当に繁茂しているため、サギにとっては申し分のない環境となっていました。この生態系を崩すと、サギは民家付近に営巣し糞害等による農作物の被害や悪臭及び鳴き声による騒音被害を及ぼすことから、橋梁建設に伴う中州への影響を最小限に抑えるため、工事中に様々な対策を実施しました。
位置図
位置図
阿賀野川上空から撮影
阿賀野川上空から撮影

中州の事前調査

 橋梁の工事前に現地の調査を実施しました。サギの生息状況としては、巣の数が2,000巣程度で飛来時期はアオサギが最も早く3月中旬、続いてその他のサギが飛来し、営巣後の9月中旬にはほとんどのサギが南方に向かって巣立ってしまうことがわかりました。
 現地では、アマサギ、アオサギ、ダイサギ、チョウサギ、コサギ、ゴイサギの6種類のサギが確認されました。
中州のサギ類の営巣状況
中州のサギ類の営巣状況

サギの営巣地を守るために

 工事中においては、サギの生態系に極力影響を与えないよう十分配慮し、下記の対策を実施しながら工事を進めました。

(1) 工事用機械・仮設物の塗色

 下部工工事に使用する基礎工を施工するための仮設機械及び上部工を施工するための架設機械ににおいて、サギの警戒心を和らげるよう周辺環境に溶け込む濃緑色に塗装して施工しました。

(2) 目隠し網の設置

 中州付近の作業時には、目隠し網を設置し極力人間の存在による威圧を感じさせないよう配慮して施工しました。

(3) 低騒音機械の使用

 騒音、振動に対してサギ類は非常に敏感な反応を示すことから、下部工工事においては、機械の排気音を低減するために大型マフラーを使用したり、金属の衝突音を低減するために緩衝材を設置した。また、上部工の架設機械においては電動型を使用して低騒音・低振動化を図りました。
仮設物の塗装と目隠し網
仮設物の塗装と目隠し網

(4) デゴイ(サギの模型)によるサギの誘導

 サギが営巣する中州は、上島と下島に分かれており、巣の大部分は上島に作られていました。しかし、高速道路は上島の一部を通過するため、サギを下島へ移転させるための引越し作戦が行われました。デゴイと呼ばれるサギの実物大模型を20体製作して下島に設置し、そこにも巣があるように見せかけて誘導するというものです。この結果、巣の数は工事着手前の平成9年には上島に2,088、下島には0でしたが、上部工の施工が完了した平成13年には上島2,008、下島803へと変化しました。両島合わせて2,088だったものが、2,811と増加傾向になったことから、この対策は大成功でした。
中州に設置したデゴイ
中州に設置したデゴイ
中州のサギの営巣数の推移
中州のサギの営巣数の推移

高速道路の安全を守るために

 中洲に出入りするサギと通行車両との衝突防止を図り、高速道路を走行するお客様の安全を確保するため、高さ5mのポールを3m間隔で設置し飛行高度を変化させる対策を実施しました。また、お客様への注意喚起として「鳥注意」の標識を設置するなどの対策を実施しました。
 平成14年に開通して以来、サギの衝突等による事故が発生していないことから、有効な対策であったと思っています。
衝突防止ポール
衝突防止ポール
「鳥注意」標識
「鳥注意」標識

対策の全体概要
対策の全体概要

参考文献

  • 日本海東北自動車道 阿賀のかけはしと自然環境の保全
         平成16年2月 日本道路公団北陸支社 (社)道路緑化保全協会
  • 日本海東北自動車道(阿賀のかけはし)の建設と自然生態系との共生
         日本道路公団北陸支社 新潟工事事務所

    基本データ

  • 橋梁名:日本海東北自動車道 阿賀のかけはし
  • 橋長:951m
  • 上部工形式:12径間連続PC箱桁橋
  • 上部工架設工法:プレキャストセグメント架設工法
  • 基礎形式:ニューマチックケーソン
  • 工事期間:平成9年〜平成14年
  • 供用時期:平成14年5月26日

    アクセス

  • 新潟市江南区・北区
  • 日本海東北自動車道 新潟空港IC〜豊栄SA間
  • JR白新線 大形駅より 徒歩約20分(L=1.5km)

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