第26回(平成23年4月6日)

高波による侵食から新潟市中心部を防護
     〜新潟海岸・新潟港西海岸の侵食対策〜(新潟市中央区・西区)

新潟海岸と背後地の状況

新潟海岸・新潟港西海岸の概要

 新潟海岸・新潟港西海岸は、本州日本海側最大の都市である新潟市の前面に位置する砂浜海岸で、背後地は新潟市の中心市街地になっているとともに、本州屈指の大平野である越後平野が広がり、日本の代表的な穀倉地帯となっています。
 新潟海岸・新潟港西海岸には全国有数の大河川である信濃川が流入しており、その膨大な流送土砂によって幾重にも発達した新潟砂丘が形づくられました。

新潟海岸・新潟港西海岸における海岸侵食

 新潟海岸・新潟港西海岸は明治以降、河川改修による流送土砂の減少、海岸部に築造された 構造物による供給土砂の遮断、更には昭和30年代頃の急激な地盤沈下などにより、堆積性の海岸から著しい侵食性の海岸に変化してしまいました。
 河口部に位置する新潟港西海岸では、海岸汀線の後退が始まり、大正年間には平均5m、昭和初期には年平均2.5mと侵食は進行し、明治の後半から現在に至るまでに、最大約350mもの後退を余儀なくされました。
海岸侵食の状況〔明治44(1911)年と昭和60(1985)年の比較〕
新潟海岸の汀線後退の経年変化
信濃川改修工事と汀線後退との関係
昭和24年頃には新潟測候所だった建物が海中に没している 侵食された日和山

浸食対策事業

■新潟海岸

海岸保全区域図

@有明浜工区、他

 新潟海岸の著しい侵食の状況を踏まえ、国土の保全上特に重要な海岸として、国の直轄事業により海岸保全施設の整備が進められることとなり、関屋分水路左岸から新川漁港までの延長約8kmの海岸(有明浜工区・五十嵐浜工区)について、昭和52年度より離岸堤や人工リーフを中心に整備を行い、現在では砂浜の回復が見られています。
 なお、新川漁港から東側の約4kmの海岸(五十嵐浜工区)は、事業効果の発現により平成20年度に直轄事業を完了しました。

A金衛町工区

 関屋分水路右岸から東側の約3kmの海岸(金衛町工区)は、侵食が著しいことから、昭和40年度より新潟県の補助事業として侵食対策が実施されてきましたが、平成19年度より国土の保全上特に重要な海岸として直轄事業に採択され、ヘッドランドや人工リーフなどの整備により、抜本的な海岸保全対策を図ることとしています。
金衛町工区の完成イメージ
ふた山人工リーフ ヘッドランドと人工リーフの機能

〈新潟海岸における事業の効果〉

 有明浜工区において、昭和52年度の直轄事業の着手以降、離岸堤や人工リーフなどの整備を進めてきた結果、砂浜の回復が図られてきました。
 また、平成元年度には「新潟海岸コースタル・コミュニティー・ゾーン(C.C.Z.)整備計画」の認定を受け、海岸事業とともに公園事業や道路事業などが連携して実施され、人々が海と親しみ、集い憩える海浜地域として離岸堤及び緩傾斜護岸、なぎさのふれあい広場並びにアクセス道路などの整備が行われました。
事業の効果

■新潟港西海岸

新潟港西海岸は、信濃川河口部左岸から西側の約3.5kmの砂浜海岸です。
 昭和初期から始まった侵食対策工事は、当時の工事が局所的かつ簡易なものであったため、侵食対策を実施しても容易に破壊され、その都度復旧するといった状況でした。
 本格的な工事は、昭和21年に設立された「新潟港技術委員会」により昭和26年11月に新潟港西海岸侵食対策工事の全体計画が決定されたことに始まります。この計画の基本は、@海岸から100m〜150m沖合の水深3.0mの位置に潜堤を設けるA横の流れを防ぐために突堤を設ける、といった内容でした。これに基づき工事は実施され、考え方は基本的にそのまま受け継がれ、今日に至っています。
新潟港西海岸の浸食対策工事

現在の離岸堤が抱える課題

〈新潟港西海岸における侵食対策の必要性〉

 新潟港西海岸の背後には、古くから新潟の商業の中心である古町、市役所、国の出先機関が存在し、新潟県及び北陸地方の行政・経済の中枢ゾーンを形成しています。また、その周辺には住宅が密集し、海岸線の直背後まで迫っており、侵食に対する住民の不安は計り知れないものがありました。
 このため、新潟港西海岸では、離岸堤等を設置したことにより、往年の急速な侵食は収まり、離岸堤内の海岸部は平衡な状態を維持しました。しかし、現実には多くの被災、構造物の沈下、飛散等を経験し、その都度復旧と改良が加えられ、この機能を維持するためには年間数億円の費用を要し、半永久的な補強工事を必要としました。
 また、離岸堤の沖合の広い範囲では、依然として海底面の欠壊が進んでおり、将来的には離岸堤の崩壊にも繋がりかねない状況にありました。

〈新潟港西海岸における新たな侵食対策 −面的防護工法−〉

突堤(第1)平成10年7月  新潟港西海岸地区(日和山浜地区、寄居浜地区)は、新潟市民から砂浜の復活を要望する声が高く、人と海のふれあいの場として、海浜空間を再形成することが望まれていました。
 しかし、従来の侵食対策では、幅広海浜の確保が困難であったこと等から、要望に十分対応できない現状でした。
 このため、新潟港西海岸の新たな海岸侵食対策として、海岸地形をより安定的、持続的に防護、維持し、且つ、より快適で潤いある海岸環境の創出が可能となる『面的防護工法』を導入することとし、昭和61年度より本工法による侵食対策事業を実施しています。
 この面的防護工法とは、約500m沖合の潜堤及び海岸から直角に伸びる突堤等の構造物を複合的に配置し、さらに潜堤背後に砂浜を造成する工法です。従来の工法が海岸侵食の主要因である波浪を浅海域の離岸堤で一気に遮断するのに対し、面的防護工法は、沖合の幅広天端の潜堤及び砂浜等により波のエネルギーを漸次減衰させる方式であり、潜堤前面の海底面を含め海岸地形を安定的に維持することが可能です。また、広い静穏水域と幅の広い砂浜が創出されることから、親水空間等として、より多様な機能の導入や利用が可能となります。
面的防護工法とその効果

人々の憩いの場の創出

日本海夕日コンサート  多くの人々が昔の砂浜の回復を願っているなど、近年、国民の価値観の多様化、余暇時間の増大に伴い、親水空間や海洋性レクリエーションに対する要請が高まっており、海岸を人々の憩いの場として、より積極的に活用するための施策が強く望まれています
 新潟海岸では、海岸事業の効果により創出された砂浜の上で、現在では新潟の夏の風物詩となっている「日本海夕日コンサート」を始め、各種の取り組みが実施され、有効に活用されています。

【日本海夕日コンサートの概要】
 ○ 昭和61年から開催(平成元年以降、有明浜で開催)
 ○ 平成22年で25年目(平成2年は台風により中止)
 ○ 来場者数は、近年で5〜6万人程度

(2010 日本海夕日コンサート)
 ■ 開催日時 : 平成22年8月7日(土) 16:30〜20:30
 ■ 出 演 者 : スターダスト・レビュー、山本潤子(ハイファイセット)、KAN、他

にぎわう砂浜  新潟港西海岸の一部砂浜では、背後の松林などと融合し、その景観は市民に愛されています。特に日和山浜は、長い歴史があり、人々の身近な海水浴場として利用され、水平線に沈む夕日は新潟港西海岸のシンボル的な風景として親しまれています。
 面的防護工法による海岸事業が完成すれば、広大な砂浜と静穏な水域が創出され、親水空間等として多様なポテンシャルを有することとなります。これからも市民の要請を勘案しつつ、事業を進めていきます。

 

参考文献

・信濃川下流河川事務所 ホームページ : http://www.hrr.mlit.go.jp/shinage/
・新潟港湾・空港整備事務所ホームページ: http://www.niigata.pa.hrr.mlit.go.jp/
・日本海夕日キャンペーン ホームページ: http://www.yuuhi.net/

基本データ

(1) 新潟海岸
   有明浜工区:離岸堤 16基、人工リーフ 2基、緩傾斜護岸 615m、他
   金衛町工区:ヘッドランド 4基、人工リーフ 3基、養浜 約114万m3
(2) 新潟港西海岸
   離岸堤(潜堤)、突堤、護岸(養浜)

アクセス

(1) 新潟海岸
  金衛町工区
   ・JR新潟駅(万代口バスターミナル)より、浜浦町先回り線バスで約20分、
    「松波町3丁目」下車、徒歩で約10分(関屋浜海水浴場付近までの所要時間)
   ・JR白山駅(越後線)より、徒歩で約20分
   ・女池IC(国道8号新潟バイパス)より、車で約10分
  有明浜工区
   ・JR新潟駅(万代口バスターミナル)より、有明線バスで約30分、
    「有明西」下車、徒歩で約15分(青山海岸海水浴場付近までの所要時間)
   ・JR小針駅(越後線)より、徒歩で約20分
   ・黒埼IC(国道8号新潟バイパス)より、車で約10分
(2) 新潟港西海岸
  ・JR新潟駅(万代口バスターミナル)より、美術館線バスで約15分、
    「新潟市美術館前」下車、徒歩で約10分(日和山浜海水浴場付近までの所要時間)
  ・桜木IC(国道8号新潟バイパス)より、車で約15分

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