第21回(平成23年3月11日)

新潟市の大動脈 新潟バイパス(新潟市)

国道7号・8号・49号を繋ぐ紫竹山I.C.

新潟市の高速道路?「新潟バイパス」

 新潟バイパスは、黒埼I.C(新潟市西区)から海老ヶ瀬I.C(新潟市江南区)間を結ぶ延長11.2kmの道路です。高速道路のように沿道との出入りをなくし、交差点を立体構造とした道路(アクセスコントロールされた道路)となっています。昭和45年に暫定2車線供用され、昭和60年に完成6車線として供用されました。信濃川と阿賀野川の間を結ぶ新潟の大動脈として機能しており、国道7号、8号、49号、116号等の主要道路と接続しています。
 高速道路のようにアクセスコントロールされているため旅行速度は速く、新潟市を通過する交通に利用される他、市民の通勤等にも利用されているため、全国有数の交通量となっています。
新潟バイパスの概要

バイパスを幹線ネットワークに

■計画の背景
 新潟バイパスの構想は、昭和30年台に遡ります。当時の新潟市は中心市街地を縦貫する国道7号、8号の交通量が激増しており、交通事故と交通混雑を引き起こしていました。このような中で、新潟産業都市計画を中軸とした産業活動の活発化、近郊部の都市化、住宅化等により、更なる交通量の増加が予想されていました。
 こうした背景から新潟バイパスは、市街地を走る通過交通を分離し、国道7号、8号、49号、北陸自動車道からの自動車交通を円滑に市街部へと導くため計画されました。
バイパス供用前の新潟市内

■計画構想
 当時は新潟市以北に高速道路の計画がなかったため、新潟バイパスは、渋滞対策のためのバイパスとしての機能だけではなく、新潟市以北に対する幹線道路ネットワークの機能を併せ持つ道路としての計画構想が議論されました。計画当初は、完成4車線、一部が平面交差となる道路とされていましたが、亀田バイパスの具体化や栗ノ木川埋め立てによる都市計画道路、港大橋構想等により更なる交通量・交通事故の増加が予想され、完成6車線、全立体交差となる道路へと変更されました。

■ルート選定・周辺住民との協議
 ルート選定では、バイパスが市街地と接近しすぎると用地取得や家屋移転に多額の費用を要し、逆に離れすぎるとバイパスと結びつく道路の新設を必要とすることや市街地へのアクセスに時間が掛かること等が考慮されました。その結果、新潟バイパスは、新潟市の市街部南東部に位置する紫竹山砂丘に並行して、国道7号の海老ヶ瀬から、国道8号の黒埼付近をまっすぐ結んだ位置に計画されました。
 また、バイパス周辺の発展のためにも、全線に側道を設置することが望ましいと考えられていましたが、当時の他のバイパスより高規格で計画された道路であったため、これ以上に事業費をかけるべきかという議論が繰り返されました。しかし側道設置を望む新潟市の要望により、補償農道としての側道は国が、それ以外の側道は新潟市が用地買収を行いました。その結果、一般国道としては最初の全線側道付きのバイパスを実現できることになったのです。

信濃川を渡り亀田郷の上に造る

 新潟バイパスは昭和42年に工事着手され、昭和45年に暫定供用されました。暫定供用後も、交差点の立体化や4車線化、6車線化工事が進み、昭和60年には全線立体交差の6車線道路として完成しました。主要工事は、盛土、橋梁、インター高架橋でした。その後も、交通状況に合わせ、ハーフインターチェンジの追加や遮音壁の設置等がされました。

新潟バイパス周辺の地形図 ■軟弱地盤対策
 新潟バイパスの計画路線は、そのほとんどが後背湿地を通過しており、軟弱地盤対策が課題とされました。後背湿地の土質は、表土、ピート、砂質土、砂層の4層に区分され、特にピートは含水比、間隙比が極めて大きく、圧縮性が高いため問題とされました。
 軟弱地盤対策として、ピート層は荷重に対する沈下速度が早いため、早期に地盤の強度増加を図れるプレロードによる緩速盛土工法が主に採用されました。さらに横断構造物等の前後では圧密沈下による影響を防ぐため、シートやネットを埋設する等の処理がされました。盛土材には、関屋分水路や東港の掘削土、新潟市周辺の砂丘等から搬入された砂が用いられ、その量は約173万m3と、新潟県庁の約10個分の体積に相当する土量となります。
 また、橋梁基礎工事等の杭打ち時の振動と騒音が、近隣住民から問題となり、場所打ちRC杭を使用するなどして対応されました。工事の後半期には、技術発達により既成杭の無振動・無騒音工法が開発・普及されており、昭和53年から鋼管杭に適用され、環境問題にも配慮がなされました。

■新潟大橋
 新潟バイパスは、新潟大橋や紫竹山跨線橋、各インターチェンジ橋等の主要10橋の他、道路横断BOXなどの数多くの構造物があります。その中でも信濃川を横断する新潟大橋は、新潟バイパス唯一の渡河橋となります。
 橋梁の線形はバイパスと北陸自動車道が直結するために半径1,000mの大きな曲線となり、幅員も黒埼側はICと接近しているためランプのテーパ部分が拡幅されています。橋梁形式は上、下線の分割施工と施工性が考慮され、下部工は一期線をケーソン基礎、二期線は一期線と近接施工となるためニューマチックケーソンとされました。上部工は連続鋼鈑桁とされました。
新潟大橋の概要と建設風景

新潟市の大動脈に

 暫定2車線供用された翌年、昭和46年の平日12時間交通量では約2万台となりました。その後、新潟バイパスの整備が進むにつれて交通量も増加を続け、全線6車線供用となった昭和60年には約6万台と、暫定2車線時の2倍以上となりました。その後も接続する新新バイパス・亀田バイパス・新潟西バイパスの整備により交通量は増加し続け、平成11年度の全国調査(道路交通センサス)では、平日12時間交通量で、桜木-紫竹山間が全国1位、女池-桜木間が全国3位となり、全国でも有数の交通量がある道路となりました。平成11年以降の交通量は横ばいとなり、交通容量の限界となっていることがうかがえます。平成17年度の全国調査(道路交通センサス)では平日12時間交通量で桜木-紫竹山間は全国2位、紫竹山-竹尾間は全国5位となっています。なお、平日24時間交通量では、桜木-紫竹山間が144,800台/日、紫竹山-竹尾間が125,500台/日となります。
新潟バイパスの平日12時間交通量

 また、交通量の増加は沿道環境にも影響を与えており、新潟市の人口集中地区(DID地区)は、暫定2車線供用後の昭和45年以降、大きく拡大しています。特に新潟バイパス周辺部は、ほとんどがDID地区へと変わっており、バイパスが市街部の拡大に寄与していることがうかがえます。
新潟市街部におけるDID地区

一般国道8号新潟バイパス 桜木I.C.方面より女池I.C.方面をを望む  新潟バイパスとその周辺道路の交通量をみると、軸となる新潟バイパス、新潟西バイパス、新新バイパスの交通量と、その接続している道路の交通量が多く、新潟市の大動脈として機能していることが分かります。
 しかし、朝夕のピーク時には、ランプを降りた交通がインターチェンジ下の交差点でさばききれず、その滞留長が本線まで達し、渋滞を引き起こすことがしばしば発生しています。そのため、インターチェンジの利用交通を分散させることを目的に、平成17年には、最も交通量が多い桜木-紫竹山間に弁天I.C(ハーフI.C)が新設されました。また現在は、最もインターチェンジ間の距離が長い竹尾-海老ヶ瀬間に(仮称)逢谷内I.C(ハーフI.C)が事業中となっています。
 新潟バイパスは、新潟市の発展と共に暫定供用から約40年が経ちました。これからも新潟市の大動脈として、市の発展に貢献していくことでしょう。
新潟バイパス周辺道路の平日24時間交通量

参考文献

  • 新潟国道二十年史(新潟国道事務所)
  • 新潟国道三十年史(新潟国道事務所)

    標準横断面図

    基本データ

  • 路線名:国道7号(紫竹山I.C〜海老ヶ瀬I.C)・国道8号(黒埼I.C〜紫竹山I.C)
  • 起終点:海老ヶ瀬I.C(新潟市東区海老ヶ瀬)〜黒埼I.C(新潟市西区下山田)
  • 延長:L=11.2km
  • 幅員:1.25-10.5-3.0-10.5-1.25(26.50m)
  • 規格:第3種第1級
  • 設計速度:V=80km/h
  • 法定速度:V=60km/h

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