第14回(平成22年1月30日)

亀田郷の命綱  鳥屋野潟排水機場(新潟市江南区)

鳥屋野潟とその周辺

 鳥屋野潟流域は亀田郷とも呼ばれ、新潟市の一部と旧亀田町及び旧横越町にまたがる99.8km2の流域面積を有し、そのほとんどが信濃川や阿賀野川の水面より低い低平地で構成されています。
【鳥屋野潟流域(亀田郷)】
【鳥屋野潟流域の概要】
 鳥屋野潟は昔から雨水の調整池として流域の水害軽減に役立ち、また潟の広大な空間は水と緑のオープンスペースとして四季を通じて市民に親しまれており、古くから地域社会との深いかかわりがあります。
【鳥屋野潟周辺(左の写真はビッグスワン)】

【鳥屋野潟排水機場(左は親松排水機場)】

鳥屋野潟排水機場の必要性

 1964(昭和39)年の新潟地震による被災や天然ガスのくみ上げによる地盤沈下のため使えなくなってしまった栗ノ木排水機場に代わって、流域の排水を鳥屋野潟に集め、そこから信濃川に排水する目的で、親松導水路及び親松排水機場が1968(昭和43)年に建設されました。しかし、その後の急激な都市化やさまざまな開発に伴い、鳥屋野潟へ流れ出る水量は増加しています。
 1998(平成10)年8月4日、かつてない集中豪雨が新潟市域を襲い、新潟市では観測史上最大となる60分間雨量97mm、日降雨量265mmを記録し、通船川や鳥屋野潟流域に大きな被害をもたらしました。
そこで、鳥屋野潟から信濃川への排水量100m3/sを確保するため、常時排水を行い、毎日鳥屋野潟の水位を調整している60m3/s排水可能な親松排水機場のとなりに、40m3/sの鳥屋野潟排水機場と、将来的な排水量180m3/sを見据えた排水樋門の建設を計画したのです。

【鳥屋野潟排水機場のスライド天井】

鳥屋野潟排水機場建設の工夫

 鳥屋野潟排水機場は1999(平成11)年度に建設を開始し、2003(平成15)年度に完成しました。建設にかかった総事業費は85億円です。鳥屋野潟排水機場の建設工事では、例えば、スライド天井を採用し、ポンプのメンテナンスをトラッククレーンにより行うことを可能とし、従来のポンプ用クレーンを省略することでコストを縮減するなど、コストを減らすさまざまな工夫、小型化や自動化、多目的に使える部屋の設置など、時代に合わせた考えを取り入れています。

鳥屋野潟排水機場の効果

 土地のほとんどが川の水面より低い新潟市域では、平地にたまる水をポンプによって強制的に川へ流す必要があります。
 1998(平成10)年8月4日に新潟市を襲った集中豪雨は、新潟地方気象台観測史上最大の60分間降水量97mm、日降雨量265mmを記録し、ポンプの排水能力を超えた雨量により、通船川や鳥屋野潟流域において、床上・床下浸水の被害が広がり、一般被害額は約976億円にも及びました。
 鳥屋野潟排水機場の完成により、平成10年8月4日と同規模の豪雨が発生した場合でも、右図のように浸水被害を大幅に軽減することができます。
【(左)事業前の浸水被害状況 (右)事業による浸水被害の軽減】

参考文献

  • 信濃川下流河川事務所ホームページ
       http://www.hrr.mlit.go.jp/shinage/
  • 新潟県親松排水機場、新潟農地事務所:「みんなの暮らしを守る!亀田郷と親松排水機場」

    基本データ

  • 河 川 名:1級河川信濃川水系鳥屋野潟
  • ポンプ能力:40m3/s(20m3/s × 2台)
  • 竣   工:平成15(2003)年5月

    アクセス

  • 住  所:新潟市江南区太右エ門新田字横堀内75番地
           (主要地方道 新潟・小須戸・三条線沿い 親松排水機場隣)
  • JR新潟駅南口より 車で約20分
  • 公共交通:新潟交通バス 万代シテイバスセンター発 曽野木ニュータウン行、または、
            曽川・嘉木・酒屋車庫・小須戸神社前行 親松バス停下車 徒歩5分

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