第12回(平成22年1月12日)

優雅なアーチ式ダム  奥三面(おくみおもて)ダム(村上市)

 新潟県設置のダムとしては唯一のアーチ式コンクリートダムで、県管理のダムの中で最大の貯水容量を誇ります。奥三面ダム周辺は磐梯朝日国立公園に指定され、手付かずの大自然が今なお残り、四季折々の風景を楽しむことができます。また、下流にある三面ダムの清流とダム湖は、朝日スーパーラインや原生林とともに『にいがた景勝百選』に選ばれており、新緑や紅葉の季節には多くの観光客で賑わいます。

三面川と奥三面ダム

試験湛水時の奥三面ダム  三面川は、新潟県の北部に位置し、その源を朝日連峰以東岳に発します。多くの中小河川を合流しながら村上市を流下し日本海に注ぐ、延長約50kmの新潟県を代表する二級河川です。鮭や鮎を始め多くの種類の魚や生物が生息し、流域の田畑には水を潤す恵み豊かな川として親しまれています。一方で、夏場の渇水や、大雨の度に氾濫を繰り返すなど、多くの水害を引き起こしてきました。
 こうした水害を防ぐため、昭和28年に三面ダムが完成し、下流部においても河川改修を行ってきましたが、昭和42年の羽越水害では、三面ダムで想定していた洪水流量をはるかに上回る洪水に見舞われ、甚大な被害を受けました。そこで、二度とこのような被害を繰り返さないため三面ダム上流に新たなダムの建設が計画され、平成13年に奥三面ダムが完成しました。

奥三面ダムの役割

 奥三面ダムは、三面川の洪水を防ぐこと(洪水調節)、正常な流れを保つこと(流水の正常な機能の維持)、水力発電を行うことを目的に作られました。 洪水調節機能

■洪水調節

 梅雨や台風の時期、さらに、有数の豪雪地帯に位置する三面川は融雪期にも多くの洪水が発生します。ダムで洪水を受け止めて、貯め、少しずつ流し、下流の三面ダムと連携しながら街や人の命を守っています。

■流水の正常な機能の維持

 ダムが作られ川の流れを止めると、それまでそこに住んでいた動植物の生態系を崩し、自然を壊してしまいます。奥三面ダムは、これら生態系を守るため、毎秒0.7立方mの水を放流し、川の流れを保っています。 水力発電

■水力発電

 三面川流域は県内有数の多雨豪雪地帯であり豊富な水資源が存在することから、それを有効に活用し水力発電を行っています。奥三面ダムと共に建設された奥三面発電所は最大出力34,500kWであり、県水力発電の認可最大出力合計の4分の1を占めます。

奥三面ダムの管理

 奥三面ダムでは、その機能を十分に発揮できるよう日々点検作業を行っています。冬期間は積雪によりダムへの道路が閉鎖されてしまうため、月1回、ヘリコプターに乗ってダムまで行き、点検を行っています。そのほか、三面ダム管理所からの遠方監視や制御、観測データ収集など、通信設備の整備によって奥三面ダムを管理し、洪水などの緊急事態にも対応できるよう備えています。

三面集落と奥三面遺跡群

 ダム建設地の近くからは遺跡が発見され、 三面集落 全部で19箇所の遺跡群が発見されました。 土器や住居跡の他、川の付け替えや護岸工事、砂利を敷いた舗装道路などの跡も見つかり、全国的にも例のない縄文時代の土木工事跡の発見となりました。出土品は『縄文の里・朝日「奥三面歴史交流館」』(村上市岩崩)に展示されています。
 現在、奥三面ダムの貯水池となっている場所にはかつて「三面」という集落があり、狩猟を主とした自給自足の生活を送っていました。三面集落は、ダムの計画により水没することとなり、集団移転の完了した昭和60年、その歴史に幕を下ろしました。計画当初は反対だった人々のダム建設への理解・協力を得て、いまの奥三面ダムがあります。そんな三面集落の人々の思いと、三面集落があったことを後世に伝えるために、奥三面ダム貯水池の三面集落跡にはメモリアルパークが作られ、「三面ここにありき」の石碑が建てられています。
奥三面ダムとあさひ湖

参考文献

・新潟県村上地域振興局
  (「奥三面ダムができるまで」などを紹介しています)
  URL http://www.pref.niigata.lg.jp/murakami_seibi/1214852491843.html

基本データ

・形   式: アーチ式コンクリートダム
・堤   高: 116m
・堤 頂 長: 244m
・総貯水容量: 1億2550万立方m

アクセス

・村上市三面
・JR村上駅より 車で約60分(L=32km)

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